治療・援助におけるコミュニケーションに
                                           
           
   ひとと人との関係は、意識している自分と内なる自分との関係(一者関係)に始まります。その一者関係を基盤にして、自分以外の自我(他者)との関係(二者関係)や、社会すなわち複数の他者との関係(三者関係)が始まるのです。そして,その二者関係や三者関係の影響を受けて、自分自身の見つめなおしが繰り返され、ひとは成熟する。
 治療・援助関係における対象関係も、この一者関係、二者関係、三者関係が相互に絡み合っており、それぞれの関係において,コミュニケーションの目標や方法が異なる。
  治療・援助における対象関係:一者関係:自己との対峙
 
                        

                         

 治療・援助は、治療・援助にあたる者自身の一者関係と治療・援助の対象者の一者関係という二つの一者関係の出会いといえます。そして、治療・援助にあたる者自身の一者関係のありようが治療・援助に大きく影響する。 

 フロイトFreud(1856-1939)は、このひとの一者関係における心の構造を、自我・エス・超自我という概念をもちいて説明しました。自我(ego:Ich)は、現実原則に則して外界と交流する自分、エス(id:Es)は、快楽原則が支配する意識されないわがままな自分、超自我(super-ego:Uber-ich)は、良心のように自我を監視し理想を求める自分で、意識しようと努力すれば可能な前意識の領域に属している。                                           
                       
                                                                                                                

                                
               
 治療・援助における対象関係:二者関係:個人治療・援助
             
                       

                       

 治療・援助における二者関係は、社会生活における二者関係とは異なり、対象者は自分では解決が困難な生活機能の障害や課題を抱えている。したがって、治療・援助という関係においては、双方の役割と責務はあきらかに異なります。対等,平等ということで、自分のはたす役割や責務をあいまいにすることはできない。 
   治療・援助における対象関係:二者関係:個人治療・援助
              
                        

                          

 治療・援助における三者関係は、グループダイナミックスを利用した療法集団やパラレルな場のように、治療・援助にあたる者と複数の対象者との関係をいう。
 二者関係の場合は、対象となる1名との関係の成立を考えればよいが、三者関係になると、対象者同士の関係や他の治療・援助者との関係など、複雑な力動に対する視点が必要になる。


                              治療・援助に当たるものの役割
                 
  治療・援助における対象関係とコミュニケーション
    治療・援助の導入時、対象者は治療・援助者に対し、次のようなさまざまなイメージを抱いている。
         

 そして、治療・援助者がとっている役割も、次のような要因の影響を少なからず受け、本来とるべき役割とは少しずれていることもある。

         
治療・援助におけるコミュニケーションに
   **詳細は『治療・援助における二つのコミュニケーション』pp.90-104,2008