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治療・援助におけるコミュニケーションに
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治療・援助は共同作業によって成りたつが、その共同作業が成りたつためには、対象者といかにコミュニケーションをはかるかが問われる。治療・援助におけるコミュニケーションの基本は、
@ 自分の態勢を「整える」
A 治療・援助者が希望をもち「まなざす」
B 希望というまなざしを向けて「共にある」
C 対象者のこころの開きを「待つ」
D 対象者の生活機能とその思いを「知る」
E その思いを言葉に頼ることなく「伝える」
そして、
F 正しく伝えるために言葉で「話す」
ことといえる。 |
整 え る |
(「作業療法の詩・ふたたび」より)
治療・援助関係の構築で必要なことは、治療・援助にあたる者として自分の心理的態勢、物理的態勢、身体的態勢を「整える」ことである。心理的態勢とは、自分の意識や注意、関心を対象者に向ける気持ちをもつことで、その整えにおいては、対象者に対する逆転移の認識が必要になる。物理的態勢とは、対象者と言葉を交わしたり、作業を共におこなったりするときの距離や向き、位置に対するものをいう。身体的態勢とは、コミュニケーションに必要な治療・援助者自身の身体の機能や構造の状態をいう。 |
ま な ざ す |
(「作業療法の詩・ふたたび」より
「まなざす」とは、閉ざされた対象者の気持ちの「開き」にむけて、治療・援助にあたる者の気持ちを対象者に伝える非言語的なコミュニケーションの一つにあたる。まなざしには、まなざす人の思いや心の状態が目の表情として、まなざされた人に伝わる。 |
共 に あ る |
(「作業療法の詩・ふたたび」より
「共にある」とは、「まなざす」とともに、閉ざされた対象者の気持ちの「開き」にむけて、治療・援助にあたる者の気持ちを対象者に伝える非言語的なコミュニケーションの一つにあたる。 |
待 つ |
(「作業療法の詩・ふたたび」より
治療・援助関係の構築にむけて「待つ」?何を待つのか。対象者の心の準備を待つことが、治療・援助にあたる者にとっての「待つ」ことといえる。認知症や対人関係の障害ともいわれる精神的な障害がある人たちに対する治療・援助においては、「知る」こと以上に「待つ」ことが大きな意味をもつ。
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知 る |
「知る」ということは、治療・援助者が対象者に対して、「できること」を適切にはたす、「しなくてよいこと」「してはならないこと」をしないようにするためのコミュニケーションである.対象者について知るには,傾聴listening
inといわれる「聴く」、しっかりと観察する「観る」、そして聴いて観たものを「問う」、必要な情報を「集める」、対象者のおかれた状況をさまざまな情報からストーリーとして「読む」という方法がある。
1.聴 く
治療・援助において聴くことのコツに留意し、その思いに耳を傾けることで、相手には下記のような体験となる。
聴くことのコツに対して、しない方がいい聴き方もある。
何か自分が役に立たなければという思いを忘れ、どんな辛い話も、嬉しい話も、悲しい話も,ふんわりと包み込み受けとめて聴けるようになりたいものである。
2.観 る
「観る」とき、見ようという思いが強いと、みえなくなる。その場に身をおき、
@ 自分の気持ちを整えて相手の言動や周囲との関連に目をむけ
A 見聞きしたことに価値判断をせず、観ているものを受けとめ
B 何がおきているのかを知るために観る
ことが参加観察のコツといえる。
3.集める
「集める」とは、対象者の情報の収集であるが、得られた情報は、最初にその情報を得た者の価値観や主観が入り込む。したがって、自分が直接見聞きしたもの(一次データ)も含めて、他からの情報(二次データ)は常にそうした不確実性を含んでいるということを前提に扱わなければならない。
4.問 う
「問う」とは、より確かな情報を得るため、聴いたこと、観たこと、集めた情報を確かめるための、対象者とのコミュニケーションである。
5.読 む
「読む」とは、治療・援助の対象となる人が、どのように人生をすごし今に至っているのか、得られた情報をライフストーリーとして紡ぎなおす作業である。
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伝 え る |
治療・援助の共同作業を進めるうえで,対象者を「知る」とともに、いかにこちらの気持ちや考えを「伝える」かということが重要である。伝える手段としては、言語体系と非言語体系がある。意志や感情を適切に伝えるには言語によるコミュニケーションがもっとも適しているが、言語コミュニケーションが成りたちにくい対象や状況においては、「声−ことばの表情」「身体−からだの表情」「物−拡張した自我」など非言語メッセージが重要な役割をはたす。
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治療・援助におけるコミュニケーションに |
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