ひとと植物・環境 
                         
 園芸は、作業療法の種目の一つとして、その歴史と共に古くから利用されてきた。治療的利用は、18世紀後半〜20世紀にかけての道徳療法(moral treatment)興隆のなかで、精神障害や知的障害がある人たちにもちいられたのが始まりである。
 その後、都市化、産業構造の変化、道徳療法の衰退、精神病に対する医学的治療の台頭などにより、園芸の治療的利用も作業療法と共に一時衰退した。そして、2度の大戦で、傷痍軍人の社会復帰を目的としたリハビリテーションの需要が高まり、再び生活を構成するさまざまな作業をもちいる療法が見直された。それにともなって、音楽、絵画などさまざまな活動が療法として独立するようになり、園芸療法もそうした流れのなかで生まれた。

 アメリカでは、1960年代に大学で園芸療法の講義が行われるようになり、1973年にアメリカ園芸療法協会(American Horticultural Therapy Association:AHTA)が設立されました。園芸療法士の資格は、一定の教育課程を終え実務経験をあわせてAHTAに申請する認定資格である
ヨーロッパでは、園芸やガーデニングの歴史は長いが、療法としての普及は少し遅く、1978年にイギリス園芸療法および農業訓練協会(Horticultural Therapy and Rural Trainlng Association:H.T.)が設立された。資格制度はなく、大学やH.T.などで実践者を育てる講座や講習会がもたれている。

 わが国では、1900年代初頭から精神病院で作業治療の手段としてもちいられ、知的障害児・者の養護教育における体験学習や作業所、授産施設では、作業種目の一つとしてもちいられてきた。園芸療法という形で注目されるようになったのは、1990年代に入ってからで、現在、欧米で園芸療法士の資格を取得した人たちが中心になり、園芸療法の紹介や研修会が開かれている。2008年に日本園芸療法学会が設立された。

                     
 
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