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 1)身体機械論の行き詰まり
 心身医学は、フロイトFreud(1856-1939)のヒステリーや神経症研究による心身相関を理論的背景として、1930年代にアメリカで体系化されました。近代(西洋)医学は、「病める人(patient with illness)」から「疾患(disease)」を客体化することで、原因究明や治療法開発に多くの成果をあげました。しかし、疾病構造の変化により心身相関を考慮した総合的な医療の必要性が高まり、心身二元論を基盤とした近代西洋医学の身体機械論的見方の行きづまりで注目されるようになったのが、心身医学と関連の深い補完・代替療法です。


 2)補完・代替医療
 補完・代替療法は、大学医学部で教育されている近代西洋医学以外の療法の総称で、道教と関係の深い中国伝統医学やヨーガ哲学を基盤としたインドのアーユルベーダなどの代替医学システム、瞑想療法やイメージ療法など心身への介入をはかるもの、食事療法やサプリメントなどの生物学的療法、カイロプラクティック、マッサージ、整体などの手技的療法、エネルギー療法といわれる気功などが含まれます。
 多くは、禅やヨーガの修行など東洋思想の伝統的な身体観を背景としたもので、ウィルバーWilber(1949- )らのトランスパーソナル心理学も、東洋の修行法や宗教と西欧の心理学とを包括することで、身体機械論的な人間観の行きづまりを乗り越えようという試みとみることができます。


 3)身体観の変化
 
精神と身体を分け、身体を第二義的なものとした古代ギリシャから近代合理主義にいたる身体観が問いなおされ、心身相関に対する新たな認識と近代科学が意図的に軽んじてきた身体のリアリティの復権といえます。

                    **詳細は、『治療・援助における二つのコミュニケーション』pp.18-24,三輪書店,2008 
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