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音楽は、楽器、広くはオーディオ機器など音素材によって形成された音が、その強弱、高低、色彩、長短、旋律、リズムなどにより、ある意味を形づくられた空間的な形象をいいます。 音楽を療法としてもちいる場合には、音楽の要素がもつさまざまな特性がひとの心身にもたらす影響を利用する。音楽の要素には、リズム、メロディー、ハーモニーの3要素をもとに、主題、形式、調性、拍子、テンポ、楽器によって構成されますが、直接心身に影響するものと、音楽そのものの基盤として間接的に影響するものがあります。 これら音楽の要素は、西洋音楽における要素分析によるもので、ジャズに似た要素を含んでいるといわれる三味線には強いリズムはあるが、ハーモニーに類する概念がないように、こうした西洋音楽理論で説明できない音楽(民俗音楽や伝統音楽など)も多くあります。ひとと音楽の関係、特に療法としての音楽という視点からは、西洋音楽理論で説明しきれない音楽は重要な意味をもっていますが、ここでは、現代西洋音楽の要素とその特性を概観します。 |
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音楽の要素と心身への影響 |
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リズム(律動)) リズム(律動)は、時間の流れのなかで一定の間隔で刻まれる連続した周期性をもつ運動で、拍節を規則的に組み合わせ、小節という形で区切り、時間的流れを引き伸ばしたり縮めたり変化をコントロールすることで、規則正しさやそれを緩める動き、自由な動きを生みだすことができます。 リズムは、脈拍、呼吸、運動など身体の生命現象に始まり、仕事のリズムや生活リズム、日、週、月、年といった時間や期間の区切りなど、ひとの生命現象、生活活動すべてに存在しています。心身機能の異常により、こうした生体としてのリズムが崩れたり、またリズムの崩れが心身の機能の調和を崩すなど、リズムはひとの基本的な機能から生活まで影響を及ぼします。 |
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メロディー(旋律) メロディー(旋律)は、音楽的にまとまりのある高低の変化をともなう一連の音(通常単音)の連なりをいい、ノンバーバルな音声コミュニケーションを起源とするもので、民族音楽や民謡、フォークソングにみられるように、民族や時代の音感覚を反映し、風土や文化、個人の想いや思想などのメッセージ、感情を表します。そのメッセージ性がひとの情動に大きく影響します。 メロディーの音運動の変化、音の高さの変化は、上行か下行という「方向」と、順次進行か跳躍進行という「動き」、同音連打や保留という時間的進行だけの「持続」に分別でき、下行型は副交感神経の働きを高め、ひとにとって心理的・生理的に最も自然な旋律で緊張を緩和し、安らぎをもたらし、上行型は交感神経の働きを高め、ひとを覚醒させ、活動的にします。時間的な変化は、時間的間隔が短いと緊張を高め、持続性や継続性が強調され、長いと慣れが生じ、単調になります。 |
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ハーモニー(和声) ハーモニー(和声)は、和音の進行や組み合わせをいい、快いと感じて受け入れられる音は、時代や地域によって異なります。 協和音のシンプルで明確な響きの連続した流れは、自然で刺激が少なく、安心感や安堵感をもたらし、不協和音は軽い緊張感をともないながら、そこから抜け出し、安定した協和音へむかおうとする気持ちを引き起こします。そのため、意図的にテンション・ノートにより、高まった感情の不安定なゆらぎに同調させる技法や、解決和音により、不安定な感情の高まりが静かに引いていく感覚を与えることを期待する技法ももちいられます。協和音の中に適度な不協和音を組み合わせた楽曲には、ひとの精神や感情のバランスを取り戻す作用がありま。ゆらぎを利用したバランスの回復にあたります。 |
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拍 子 拍子は、リズムと関連する強拍と弱拍の周期的パターンで、身体の動きをコントロールするためにもちいられます。行進曲のように軽快な2拍子は、リズミカルで楽しい動き、8分の6拍子は、回転などの連続した動きを引き出し、3拍子は「動くそして休む」の繰り返しを呼吸に合わせておこなうのにちょうどよいタイミングを生みます。 拍打ちするエネルギーは、上から下、腰や腹にむけて、からだの重さとこころの安定感を与えるものや、下から上への広がり、外への発散を感じさせるものがある。生活の中では、拍手という手拍子が、感激、歓迎、賛同、誓約などの感情を表現する身体的動作としてみられます。また、動きを誘発するには、動くと同時に拍の前拍に「タイミングを伝え、吸気を促し、こころと身体の準備の拍」が必要になります。開始の前のカウントつまり「1・2・3・ハイ」や「1・2・どうぞ」など、4拍子では4拍目、3拍子では3拍目に相当し、こころと身体の準備や行動の開始に大きな意味をもちます。 |
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テンポ テンポは、拍の長さ、すなわち拍節の速さで、曲のイメージを大きく左右し、こころの状態や、歌う呼吸や奏でるという身体的活動の速さをコントロールします。またテンポは、活動内容や気持ち、年齢によっても異なり、それぞれに適応水準があります。 |
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調 性 調性は、ある中心となる音があり、その音(主音)を中心として音階のシステムが存在する音体系をいい、狭義には長調と短調があり、長調の楽曲は一般的に明るく活動的で、短調は寂しく悲しいというイメージになります。即興では長調と単調を混ぜ合わせることも、無調性音楽をつくることもできます。 ある調性から移調することで、声の出る範囲に合わせて伴奏をし、発散に適した音域で演奏し、リラクセーションを生む音域と音律で演奏することなどの工夫ができます。また、曲の途中で他の調に転調することで、ほどよい緊張を求めることも、気分を変化させることも可能です。 |
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ダイナミックス ダイナミックスは、音の強弱により音楽に表情をつけることで、弱く、強く、だんだん強く、だんだん弱くなどで表されます。強くエネルギッシュで高揚する感情表現や、弱く優しく穏やかな表現も可能で、強弱の移行の幅も緩やかに少しずつ、あるいは急激に思い切って変化させるなどコントロールすることで、身体運動に変化を起こさせることが可能となります。 |
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アーティキュレーション アーティキュレーションは、音を切ったりつなげたりすることで、2つの音の間を切り離して演奏したり、滑らかに続けたりすることでメロディーに動きをつけ、重さのかかった音と、軽く力の抜けたよく響く音が交互に表現されるなどで、豊かな感情表現を可能にします。 |
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フレーズ フレーズは、文章でいう句読点と同様で、楽句、音楽の流れのなかでの自然な区切りをいい、多くは4小節か2小節、時に8小節で区切られます。フレーズの長さは、テンポにも影響されて、ゆったりした表情や活動的なイメージをつくり、フレーズとフレーズの区切りの深い息継ぎは、愛情や豊かさ、悲しみや祈りを表現します。 |
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ベース・ライン 音の動き(ベース・ライン)は、感情や動きにも影響を及ぼします。 オルタネート:同一和音(コード)が連続する場合において、ベース音が一定の音程を保ち 変化を繰り返す動き。躍動感があり、健康的で、前進エ ネルギーが大きい。 順次進行 :ある音から隣り合った音(2度)へ、上行か下行して進んでいく連続した安定した動き。次の展開への期待感が増大し、重量感があり ます。小節の頭の強拍において、一気に解決するパワーが生まれる。上品で、おとなしい曲想を生みます。 跳躍進行 :ある音が3度以上離れた音へ上行、あるいは下行する。動きをもつことで、 幅広くのびのびとした躍動感が生まれる。リズミカルな流 れが強調でき、緊張感や高揚へと移行できます。 同音連打 :同じ音を一定のリズムで、一定の時間連続する。同じ和音(コード)の間やさらに和音が変化しても、共通音の存在を強調することで エネルギーの溜めを感じ、一気に流れ出るタイミングを待つ。充実感と脱出時の解放からくる快感が大きく、強烈に盛り上げて次へ移 ろうとします。 |
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