僕が生まれて中学時代を過ごしたのは、島根の小さな山村.その村の神社の裏山は僕たちの遊び場だった。秘密基地を作って探偵ごっこなどをする、大人の知らない場所だった。ある日、その裏山の大きな木の下に、真っ白いソフトボールくらいの大きさの毛玉のようなものが落ちていた。何だろうと触った瞬間、右手の指先にひっかき傷ができて、血がにじんだ。そしてその白い毛玉が動いた。
 白い毛玉を段ボールの箱にそっと移して持ち帰ると、それがフクロウの子どもだと、祖父が教えてくれた。フクロウは一度人の手がかかると、親フクロウは世話をしなくなるから、お前が責任を持って育てるんだぞと言われ、僕はその白い毛玉のようなやつの育ての親になった。生きた餌しか食べないので、それからは、毎日、小魚を釣ったり、ミミズや蛙などを捕ってきては、箱の中に入れる日が続いた。
 半年もすると、白い毛玉はすっかりフクロウらしくなった。でも、フクロウは気高く、飼われたからといって人に媚びを振るような鳥ではなかった。餌の量も大変になったある日、小屋の戸を開けたままにしておいたら、森に帰っていった。