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集団・場

集団・場
 治療や援助の手段として集団や場をもちいるときの知識や技術は,すべて日常のできごとの中にある現象から生まれたものである.「是等の訳字を以て原意を尽くすに足らず」と繰り返し福沢諭吉が言ったように,近代翻訳語の抽象概念にとらわれることなく,日々のくらしにおけるさまざまなひととの出会い,かかわり,そこでおきている現象から出発し,そこから普遍的な概念を引き出す.
 

 書籍「ひとと集団・場」より
  集団・場                :ひとにとって集団とは何か、場とは何か
  ひとと集団               :ひとと集団の関係を動物の群れにはじまり集団の成り立ちから考える
  生活技能と集団          :生活技能の内、特に対人技能の発達と集団の関係
  集団の利用              :療法として集団をもちいる場合の留意点など
  パラレルな場とその利用     :従来の集団療法の概念を超えるパラレルな場の構造、特性、適応対象、留意事項など
  作業療法と集団・場        :作業療法で集団をもちいる場合の基本原則
  集団プログラムの計画と評価 :リハビリテーションにおける集団プログラムの考え

図表はそれぞれをクリック  ・発達課題  ・課題集団志向集団大もちい方  ・集団関連各種評価表
  7月6日の研修資料の簡易PDF
 

  2017年京都大学の講義の最終PDF2017ToposGroup.pdf へのリンク「集団・場−人の集まりを活かす」
[集団・場]に関連する総説,論文など

・「パラレルな場」という治療構造−ひとの集まりの場の治療的利用 コミュニケーション障害学26,87-191,2009
 集団療法の多くは、成員間におきる集団力動と凝集性により共通の目標や個々の課題の解決を図るもので、対人緊張の高い者や思春期心性をもつ者には、適用に限界がある。その対処として、場を共有しながら、集団としての課題や制約を受けない治寮構造として「パラレルな場」という概念が生まれた。

・統合失調症の回復過程に沿った集団の活用 作業療法ジャーナル42,825-830,2008
 他者との関わりにおいて傷つき、他者との関わりによって癒される。人格的な病い、対人関係の障害といわれる統合失調症を患う人たちに対して、パラドキシカルな意味をもつ他者との関わり、集団をどのように活かすか、回復過程と他者との関わりという視点から集団の活用について考えてみることにしよう


・パラレルな場(トポス)の利用
 作業療法18巻2号,1999
 
パラレルな場(トポス)は、人の集まりの「場」を利用しながら、原則として個人に対しておこなう作業療法特有の治療構造である。パラレルな場の構造と特性、効用、適応対象、問題と対処、などの臨床的現象を分析し、利用の仕方についてまとめた。

・話して、離し、放す 
心と社会 No.150 巻頭言
 共生(ともいき)の相互の悩みを話す場「拾円」ができて12年(2012年現在)。共に生きるために人が話すことの意味についてまとめた短文。

[集団・場]に関連する講演資料
 ・ひとの集まりを活かす−集団とダイナミックス
 
人が集まり、人を集める、そこにはさまざまなダイナミックス(力動)が生じる。ひとの集まりの場にはどのような力動が生まれるのか、その力動を療法として活かすには何に留意すればよいのか。集団を療法として活かすための構造とその効用をまとめた(2010日本音楽療法学会近畿支部講習

 

  集団を治療の手段とする理論や技法は、1980年代にほぼその基本的な体系が確立された。精神療法を基盤とするものから治療の補助、人間的成長の促進や対人技能の訓練、相互援助、学習まで、広く集団の機能を利用するアプローチが体系化されている。それらは、いずれも、ひとが集まり、関わり合うことにより生まれる力動があって成りたつものである。
  しかし現実は、ひとと人とのかかわりの希薄化が進み、たとえば、子どもの自然な発達の過程にみられる、仲間と同じ行動を取り仲間から承認されることで一体感(凝集性)を高めるギャング・グループgang groupという、自立に向かう自己同一性の確立過程でみられる現象であるが、そのギャング・グループ現象があまりみられなくなっているという。塾通いやテレビゲーム、インターネット、電子メールなどの普及の影響といわれている。また、犬や猫などの小動物をペットとして飼う者が増えている。そうしたペット類は、コンパニオン・アニマルと称されるが、その所有率が3割を超えたという。ひとと人とのかかわりによる承認欲求や親和欲求が満たされない、もしくは他者と関わることの煩わしさを回避するため、本来、ひとがはたしてきた役割を動物に期待してのことだろうか。このような現象は、急激な少子高齢社会、核家族化、未婚者や非婚者の増加といった社会現象を背景に、ますますコンパニオン・アニマルを所有する人たちが増えることが予想される。
 力動精神医学をひととのかかわりの手段として学んだ一人の作業療法士の「集団の謎解き」から始まったのがこの「ひとと集団・場」だった。
 ひとはひとの中に生まれ、ひとの中で育ち、ひととのかかわりに傷つき、ひととの交わりで癒される。その日々のくらし(生活)  存在のはじまりから「生(一生)」を終えるまで、私たちは、さまざまな「ひとの集まり(集団)」と「場」の中で生きている。
 思いもかけぬこころやからだの病いにより、失われた生きがい、あきらめかけた生きがい、奪われた生きがい、その生きがいをもう一度取りもどす手助けに、「ひとの集まり(集団)の力」や「場の力」がもちいられてきた。集団とは、場とは何だろう。自分自身の生活や仕事でひととのかかわりが深まるにつれその謎も深まった。
 治療や援助の手だてとして集団や場をもちいるときの知識や技術は、すべて日常のできごとの中にある現象から生まれたものである。「是等の訳字を以て原意を尽くすに足らず」と福沢諭吉が繰り返したように、近代翻訳語の抽象概念にとらわれることなく、日々のくらしにおけるさまざまなひととの出会い、かかわり、そこでおきている現象から出発し、そこから普遍的な概念を引き出す。自分が生活の場のフィールドワーカーになることで、「ひとの集まり(集団)の力」や「場の力」が少しずつみえてくる。
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